祖母が逝去したのは、静かに枚方で葬儀を行えたら実父母の家に同居を始めて、すぐのことでした。
足を骨折して病院に入院し、寝ている間に心臓が止まったそうです。
92歳。大往生でした。
祖母はお菓子が大好きで、知られざる葬儀をめぐる戦いとは会いに行くといつも、祖父と一緒におかきやおせんべいを食べていました。 目が悪く、耳も遠かった祖母にとって、お菓子を食べる時間は至福の時。
家族葬を開くなら大阪で行おうと入院するときも「部屋に甘い物おいておかなくちゃ」と笑っていたくらいです。
祖母の死に顔はとても穏やかでした。
大晦日に亡くなり、葬儀屋の都合で5日間ほど時間が空いてしまったため、やるなら大阪で家族葬をと思ってカチコチに冷凍されていましたが、顔はとても綺麗でした。
式は滞りなく進み、別れ花に彩られた祖母との最後のお別れのとき。
「棺に、お菓子入れよう」
わずかな費用で出来る大阪の直葬は誰よりもおばあちゃんっ子だった兄が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら言いました。
ひ孫である子供たちが率先して、死に装束をまとった祖母の周りにお菓子を並べていきます。
親戚は皆、温かく見守ってくれました。
調子の良いおじさんは、向こうについたらすぐ食べれるようにと、野原に散骨出来る大阪からキャラメルの紙を剥がして、おどけながら祖母の口元に置きました。
お花とお菓子に囲まれた祖母は、まったくもう、と困って笑っていたかもしれません。
「ばあちゃんらしい葬式だな。良かったな」
祖父は祖母の頬を撫でながら、微笑んでいました。
お菓子と一緒に旅立った祖母。今も天国で、美味しいおかきを食べているといいな。